この記事は
・芸術・文化について詳しくなりたい人
・美術館などを楽しみたい人
・教養を沢山身に着けたい人
には参考になると思います。
こんにちは。
ルネサンスという用語を皆さん聞いたことあると思いますが、この言葉の意味が分かる人は少ないのではないでしょうか。
ルネサンスとはフランス語で「再生」を表す言葉で、芸術・文化・思想のムーブメント(ジャンルと考えてよし)の一つになります。
ルネサンスなどの芸術用語は世界史の要素が含まれているため、本や解説サイトではどうしても難しく説明されがちですが、この記事では芸術・文化に疎い人でも理解できるようわかりやすく解説していこうと思います。
こういった用語の意味や時代背景が分かるだけで美術作品に込められた意図が読み取れるようになるので、美術館に行くのがとても楽しくなりますよ。
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ルネサンスの意義は古代文化の再生
先程述べた通り、ルネサンスという言葉の意味は再生を表しているのですが、これは古代ギリシャ・ローマ文化の再生を意味しています。
これは古代の人々生き方・考え方が実は一番豊かで人々を幸せにするものであり、古代の文化を研究して現在に取り入れようという当時の人々の考え方に起因しています。
というのもルネサンス文化が始まる14世紀以前の中世西欧社会は暗い時代だったと言われています。。
宗教的な価値観が強く蔓延し、悪い出来事が起これば全ては神や悪魔の仕業としてみな考えてしまい、本当の原因を追究することはありませんでした。
また戦争の多くも宗教観の違いから発生するものだったそうです。
ですが宗教というのは形のない人の脳内に存在する虚構です。
そしてそんな虚構に人々の生活は脅かされているのはおかしいと考えた当時の人々は、キリスト教が広まる前の古代の人々の暮らしを研究し始めたのです。
そしてその古代のギリシャ・ローマでは宗教に振り回されることなく、人間が自ら考え行動し、素晴らしい文化を築きあげていることが分かります。
神中心から人間中心の時代へ。
この価値観をもとに作られた思想・文化・芸術こそがルネサンスになります。
美術史でいえば
ロマネスク(中世)⇒ゴシック(中世)⇒ルネサンス(近世)⇒マニエリスム(近世)⇒バロック(近世)
という流れです。
ルネサンスは科学的な芸術・文化
2.1 ルネサンス美術の特徴
ルネサンス以前の西欧社会は宗教的な価値観が蔓延している世界でした。
食物の収穫量が減ったり、病気が蔓延したりするのは神の意志によるものとみなされていたのです。
ですがルネサンスでは不吉な出来事にもなにか原因があり、それを追究しようという姿勢が出てきます。
今までは神の意志によるものとされていたものを、科学的に解明しようということです。
そしてその価値観は芸術・文化、つまりその時代の創作物にも影響を与えます。
例えば美しいものには決まった比率があり、黄金比と呼ばれる数値を満たした作品は美しいという考え方が広まっていきます。
絵画などにおいては遠近法とよばれる手法が広まり始めます。
以前は感覚的に作られた作品たちが、理論的な手法によって創られはじめるのがルネサンス美術の特徴です。
ルネサンスを代表する芸術家の一人としてレオナルドダヴィンチがいますが、彼は数多くの死体を解剖して、人体解剖図を制作しました。
そしてダヴィンチはその解剖図によって人体構造を把握し、より正確に人間像を絵画として描きあげたのです。
ダヴィンチのモナリザが賞賛されるのは、ルネサンス以前の中世時代の絵画と異なり、人体構造の把握・遠近法の使用などそれ以前とは異なった科学的アプローチが作り上げられた絵画だからなのです。
ただ絵がうまいから語り継がれているというわけではないんですね。
ゴシック期までの絵画が平面的だとすれば、ルネサンスの絵画は立体的といえます。
油絵の登場もルネサンス絵画の特徴でしょう。
2.2 ルネサンス建築の特徴
このような価値観が蔓延したのも古代の文化を参照したからでした。n
パルテノン神殿やパンテオンなど、古代のギリシャ・ローマ建築は今でも美しい建築として知られていますが、それらの美はは何となく作られたものではなく、厳密な数学的な法則から生み出されたプロポーションに基づくものだと、中世の研究者は気付いたのです。
ルネサンス建築はそのような研究から発見された理論的な美が適応されています。
アシンメトリーの外観などもルネサンス建築の特徴といえるでしょう。
ルネサンスの栄えた時代と場所
3.1 14世紀 北イタリアでルネサンスの下地が作られる
ルネサンス文化は14世紀の中世末の北イタリアで少しずつ姿を現してきます。
北イタリアのジェノバやヴェネツィアでは商人たちが東方貿易によって富を築いていました。
またフィレンツェでは毛織物により商人階級が力を付け始めていました。
今までは宗教勢力や貴族たちが握っていた権力が、徐々に商人をはじめとした市民層に移っていくのです。
これが中世社会から近世、つまりルネサンスへの移行を意味しています。
この流れは周辺のオランダやベルギーでも同様でした。
そしてルネサンス初期の芸術作品は詩人のダンテによる「神曲」など文学分野が盛り上がりをみせました。
3.2 15世紀 フィレンツェでルネサンス最盛期を迎える
このように14世紀に下地が作られたルネサンス文化は15世紀に全盛期を迎えます。
建築史などの分野では、建築家のブルネレスキによって1436年に建設されたサンタマリア・デルフィオーレ大聖堂のドームがルネサンスが開花した日とされています。
このドームは古代ローマ建築を研究して得た理論的な手法によって生み出された、ルネサンスを代表する建築である。
ルネサンスの絵画や彫刻の分野ではレオナルドダヴィンチ・ラファエロ・ミケランジェロの三名が全盛期のルネサンスで活躍しました。
3.3 16世紀 ローマ・そして周辺諸国へ ルネサンスの完成と没落
16世紀に入ると、ルネサンスの舞台はフィレンツェからローマへと移ることになります。
建築家たちにとっては、古代ローマの遺跡があるこの地で活動できる経験はより自身の作品の完成度を高める結果となりました。
そしてキリスト教トップの地位のローマ法王がルネサンス文化を気に入り、ルネサンスの芸術家のパトロン(支援者)となったことが、後のバロック文化へとつながっていきます。
ですが1527年におきた、神聖ローマ皇帝兼スペイン王カール5世の軍勢がイタリアに侵攻したローマ掠奪によってイタリアでのルネサンス文化は終わりを迎えることになります。
その後ルネサンス文化はフランスやイギリス、スペインなどの周辺諸国へ伝搬し、各国の文化と混ざり合いながら独自の変化を遂げていきました。
(まとめ)ルネサンスが後世に与えた影響
ルネサンスは神が中心の宗教的価値観から、科学的な根拠をもつ人間中心の価値観へと変化し、芸術作品もその価値観が色濃く反映される時代でした。
ルネサンス以前の中世のゴシック文化との違いはそこにあります。
そして商人を中心に市民層が力をもち始めたのもこのルネサンス期です。
ルネサンス期のパトロン(芸術家達の支援者)はメディチ家などの有力商人であり、王族や教会などの権力者ではありませんでした。
これらルネサンスが作り上げた文化・思想・価値観は、今の時代にも大きく影響を与えています。
ルネサンスが到来せず中世の価値観のままであれば、私たちは今でも不可解な出来事が起これば宗教的な理由で片づけたでしょうし、市民が政治に口をだす自由もなかったかもしれません。
そういった意味では民主主義のきっかけはルネサンス期に作り上げられたと捉えることもできるかもしれませんね。
いかがだったでしょうか。
この記事が皆さんの役に立てれば嬉しく思います。