この記事は
・芸術・文化について詳しくなりたい人
・美術館などを楽しみたい人
・教養を沢山身に着けたい人
には参考になると思います。
こんにちは。
ゴシックという言葉を聞いたことがありますか。
ゴシックファッションやゴシック映画など、現代カルチャーでも使われる用語ではあるため、なんとなく退廃的で暗いというイメージが浮かぶ方もいるのではないでしょうか。
このゴシックという言葉は12世紀後半から15世紀頃の建築様式を指すものであり、そこから中世の美術様式や思想、人の生き方までを表す言葉になりました。
この記事ではその中世のゴシック文化についてわかりやすく解説していこうと思います。
ゴシックは世界史や芸術史との関連が深い言葉なので、本や解説サイトではどうしても難しく説明されがちですが、この記事では芸術・文化に疎い人でも理解できるようわかりやすく解説していこうと思います。
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ゴシックってどんな意味?
ゴシックは「ゴート人の、ゴート風の」という言葉が由来です。
ゴート人(ゲルマン民族)は野蛮で未洗礼な人たちと見なされていたので、ゴシック後のルネサンス期(14世紀~16世紀)の人々が暗くて発展途上の中世の文化・芸術・時代性を皮肉をこめてゴシックと名付けたのです。
ルネサンス以降の美術評論家にとって、古代ローマの文化は理想的なものと捉えられているので、そのローマを滅ぼしたゲルマン民族というのはかなり差別的な扱いをされていました。
つまり当初はネガティブな意味合いで使われていた言葉だったんですね。
実際にゲルマン民族の文化というわけではなく、野蛮なゲルマン人に例えてるということです。
実際にゴシック文化が再評価され始めるのは、18世紀のゴシックリバイバルと呼ばれるムーブメントまで遡ります。
ゴシック文化はフランスで始まり、その後西ヨーロッパにかけて広まっていきました。
ゴシック文化の栄えた時代と背景
美術史の流れで言えば
ロマネスク(中世)⇒ゴシック(中世)⇒ルネサンス(近世)⇒マニエリスム(近世)⇒バロック(近世)
という順になります。
中世と近世の大きな違いは以下の通り。
・中世というのは15世紀始め当たりのまでの時期を指し、科学がまだ未発達でキリスト教の価値観が蔓延しており、伝染病や不作が起こればそれらは神や悪魔による仕業とされていました。
・近世では科学が発達し、今まで宗教的な原因とされて不吉な出来事を科学的に解明できるようになりました。
そしてゴシック期というのは中世の終わりであり、この両者の過渡期にあたると言えます。
神中心から人間中心の時代へ。
これがゴシック期の時代背景になります。
この両者の違いは芸術作品にも現れており、非科学的・非理論的にキリスト教が表現されたゴシック芸術に対し、科学的・合理的にキリスト教以外のものもテーマとして表現されたルネサンス芸術という対比がみてとれます。
しかしゴシックは過渡期にあたるため、それ以前のロマネスク芸術(特に建築分野)に比べると合理的な進歩がありました。
ゴシック芸術の特徴
3.1 ゴシック建築の特徴
ゴシック芸術はルネサンス以降の芸術に比べると、文学・絵画・彫刻などの作品は多くありません。
なぜならこの時代の芸術というのは、市民にキリスト教を深く理解させるのが目的だったからです。
キリスト教が力を失ったルネサンス以降では、純粋に制作に取り組む芸術家が多くいたのに対し、ゴシック期の芸術家はキリスト教勢力によって雇われていた人が多くを占めるので、ゴシック芸術ではキリスト教の神の存在を強くアピールできる建築が代表的な作品になります。
ゴシック建築の特徴をざっくり説明すると、その多くが教会建築であり、それ以前のロマネスク建築に比べて構造技術が進歩したことで壁の厚さを薄くしながらも、高さをだせることにあります。
空の彼方にいる神の元に少しでも近づきたいという気持ちの表れかもしれませんね。
また構造技術が向上したことにより、壁面に多くの開口を設けることができるようになり、神秘的なステンドグラスが使われいることもゴシック建築の特徴です。
ルネサンス建築ではより構造が合理的になり、美しく見えるためのプロポーションや黄金比が取り入れられますが、ゴシック建築もそれ以前のロマネスク建築よりかは遥かに合理的なものでした。
3.2 ゴシック絵画の特徴
ルネサンス以降に比べて絵画の数は多くありませんが、ゴシック絵画にも特有の特徴が確認できます。
先程も述べた通り、ゴシック芸術はルネサンス芸術に比べて科学的にではありません。
ルネサンス以降では遠近法と呼ばれる理論的な手法により、より現実の見え方に近いように絵画が描かれますが、ゴシック絵画には遠近法などなく、作者の判断によって描かれるものの大きさの対比が決まります。
ゴシック期を代表する作家であるイタリアのチマブーエの作品である[六人の天使に囲まれた荘厳の聖母]では、周りの六人の天使が同じスケール感で書かれているため現実的な遠近バランスがなく、表情にもリアリティがありません。
平面的とでもいえばいいでしょうか。
描かれる対象も、ゴシック絵画ではキリスト教に関連したものがほとんどなのに対し、ルネサンス以降の絵画では肖像画や風景画なども多くなっていきます。
淡い色使い、人物の描写に動きがない、額縁が装飾的というのもゴシック絵画の特徴です。
現代のゴシックカルチャー
中世からだいぶ時が経った現代でも、ゴシック文化は存在しますが中世当時のゴシックとは意味合いが異なります。
あくまでも現代のゴシックとは
中世=暗い
という印象から作られた退廃的でダークなイメージを与える作品を指しています。
中世当時のようなキリスト教価値観が反映されているかどうかは関係がありません。
ゴシックロックやゴシックファッションなど現代のゴシックカルチャーにも種類がありますが、その先駆けは19世紀初頭に流行したゴシック文学でした。
4.1 ゴシック文学
先述の通り、現代のゴシックカルチャーは中世のゴシックから直接影響を受けているというよりは、19世紀初頭のゴシック文学(小説)に描かれていた反時代的で死や闇や古い館をイメージさせる内容から影響を受けています。
そもそもゴシック文学は、中世のゴシック建築風の建物が舞台になることが多かったことや、宗教的価値観が蔓延した中世の暗いイメージと小説の中で描かれていた神秘的・幻想的なイメージが似ていることからゴシックという名前が付けられています。
つまり砕けていえば、中世の時代感やゴシック文化になんとなく空気感が似ている小説をゴシック小説としたわけです。
そしてそのゴシック小説から影響を受けてできたものが、現代のゴシックカルチャーなわけなので、現台のゴシックカルチャーは中世との関連は薄いわけです。
ちなみにメアリー・シェリーの描いた「フランケンシュタイン」やブラム・ストーカーの「ドラキュラ」などの誰でも知っているキャラクター、、ゴシック文学の作品になります。
4.2 ゴシック・ロック
ゴシック・ロックは1970年代終盤あたりから盛り上がりをみせたロックのジャンルになります。
そもそもロックという音楽は沢山のサブジャンルに細分化されているため、明確な定義がしにくいんですが、ゴシック文学の世界観を受け継いだような暗い曲調や退廃的な衣装を身にまとったバンドのことを指しています。
個人的に大好きなバンドであるジョイ・ディビジョンやザ・キュアーはイギリスのゴシックロックを代表するバンドであり、素晴らしいアルバムを出していますので、ぜひチェックしてみてください。
90年代になると、ヘヴィメタルのサブジャンルであるゴシックメタルと呼ばれる音楽の人気が広まりましたが、これらはメタル特有の重低音を活かした壮大・荘厳な楽曲が多く、ダークで耽美的な音、そして女性ヴォーカルバンドが多いのも特徴です。
まあどんな音楽かは聴いてみるのが手っ取り早いでしょう。
有名どこだとオランダのゴシックメタルバンド、ウィズイン・テンプテーションや重圧感のあるサウンドを展開するドラコニアンなど、ゴシックメタルでも様々な曲調がありますので気になる方はチェックしてみましょう。
4.3 ゴシックファッション
ゴシックファッションも中世ゴシック時代のファッションとはあまり関係がありません。
どちらかといえば、ゴシック文学の中で見られるような18~19世紀のヴィクトリア風のファッションからの影響が見受けられます。
1970年代になるとイギリスのゴシックロックバンドがそのようなヴィクトリア風のファッションをよりオカルトチックに着こなすようになり、白塗りの化粧や黒系のアイラインなどもその特徴として多くみられるようになりました。
現代の日本でみられるヴィジュアル系ファッションやゴスロリファッションはそういった流れの中で生まれたものなんですね。
最近ではリックオウエンスやヨウジヤマモトのようなモードブランドもゴシックと呼ばれており、ゴシックファッションの範囲はかなり広いと言えます。
いかがだったでしょうか。
この記事が皆さんの役に立てれば嬉しく思います。